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【無駄口1】暗くてすみまそん |
現在連載している『白煙(はくえん)』なんですが。
暗くてごめんなさいm(_ _)mず〜ん・・・
シリアスな話なんで、勘弁してください。
あと、登場人物のプロフィールなんかも『無駄口』に載せたいんですが、 これをやっちゃうと2作目の『黍嵐(きびあらし)』のネタバレになっちゃう ので、これまた今しばらくご勘弁くださいませ。
ああ・・・・懺悔のページになっちゃった(-_-|||)
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テーマ:創作・オリジナル
- ジャンル:アニメ・コミック
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4 真実(3/3) |
向田は膝を抱えて真実の写真を見詰めた。そして徳川の気持ちを考えた。十年近く共に暮らした相手を亡くして、彼の気持ちはどうだったのだろうかと。辛いとか寂しいとかでは言い表すことのできない喪失感――自分が弟清真の死に対して抱いているような感覚を三年もの間一人で抱えている。そんな徳川のことを考えると、形は如何にせん自分がこうして傍に居ることがそれほど罪ではないのではないかという気になってくる。駄目だ調子に乗ってはいけないと己に反論しつつ、一方で徳川の傍には自分が居なければという気持ちが湧いてくるのを抑えられなくなっていた。 向田は膝を抱えたまま項垂れた。 「でもチューは勘弁・・・・」 浴室から出ようとしたとき、玄関の方から話し声が聞こえた。小さな声で話していたので、聞いてはまずいのかなと様子を窺っていたのだが。 後で加藤と言葉を交わしたときのことを思い返しても、我ながら素晴らしいポーカーフェイスだったと感心してしまうほどだ。 (嫁さんがいないって、そういうことだったのかよ〜。香奈さんが勝つとか負けるとかの話じゃないって。やっべーよ。オレ男のマジチュー見たの初めてだよ〜) 玄関の明かりが暗くてはっきりと見えたわけではなかったが、徳川と加藤の顔が接近していた長さから言ってかなりディープなキスを交わしていたとしか思えない。そのときの二人の映像が向田の脳を占領している。 真実と徳川の“ツーカーの仲”というのも、実は“そういう仲”だったわけだと向田はようやく理解した。 それにしても男気の塊のような木庭がよく徳川と付き合うものだと不思議に思えたりもする。反面、知らずに付き合っているのだったらどうしようなどと余計な心配も頭をもたげてくる。まあ、徳川の人徳あっての付き合いなのだろうから、壊れそうにもないのだが。 前の職場の同僚にもそういう人種が居たことはいた。気持ち悪いだの、嫌悪感は全くなかった。ただ『あの人はそうなんだ』くらいのものだった。しかし我が身に降りかかってくるとなると、ことは重大だ。向田は『いやいやオレは対象外』とブンブンと頭を振り回した。 清真の話をしたとき、耐えられなくなって泣き出してしまった自分を徳川は抱き寄せてくれた。そのときの優しさはいやらしい下心のあるようなものではなかった。むしろ頼り甲斐のある大きな存在を感じた。血の通った暖かさに、ずっとこのままで居られたらと感じたくらいだ。 (爺ちゃん以外にこんなに良くしてもらったことなかったなぁ。オレ、恩返しできるかなぁ・・・) 向田は顔を上げてもう一度真実の写真を見た。 (真実さん、ごめん。おれ、もうちょっとの間ヒロさんの傍に居てもいいかな。自分で自分の問題も片付けられないでいるんだけど、でもやっぱりオレ、ヒロさんのこと放っておけないよ) それから向田は写真をじっと見据えて 「でもマジチューは勘弁です。ごめんなさい」 こうして向田の夜は更けていった。
横になってから約三時間。徳川は目を覚ましてトイレに立った。居間を通りかかると、加藤がソファで丸くなって眠っていた。薄手の綿毛布を捲いて寝ているので傍目にはサナギのようだ。 セブンスターのボックスと細身のターボライターを掴んでベランダに出る。東の空に鈍いオレンジ色の月が昇っていた。未明の風景をぼんやりと眺めながら徳川は煙草を燻らした。深い溜息とともに紫煙を吐き出す。 (アルコールの力を借りても三時間しか持たなかったか) 酔いに任せて布団に転がり込んだものの、まともに眠れなかった。徳川はベランダの柵に寄りかかって、より深い溜息をついた。 (俺はどうすりゃいい?真実) 徳川は月より遠い世界に逝ってしまった片割に向けて問い掛けた。
料亭“葵”の一室。徳川は刑事の弓削明から情報を得るべく密会を果たしていた。 『ヒロよ。向田松院だがな、ありゃあ、ちょっとどころでない曰く付きだぜ。兄貴の懐音をおまえさんも見たろう?松院と比べておまえさん、どう思った?ほかに兄貴が二人いるんだが、これたちも顔が違うんだ。なんでも本当の母親が他所でこさえた子を置き去りにして出て行ったんだと、門徒の間じゃ誰も言いこそしないが知っちゃいるっていう話だったよ。三男が生まれた後くらいから夫婦仲がおかしくなっていたらしいんだが。旦那が、いや向田兄弟の親父っていうのが、坊主にしちゃあなかなかのやかまし者らしくてな。あの寺は爺さん婆さんの人徳で持ってるようなもんだと言う人もあるくらいだったそうだぜ』 なるほどそうかと徳川は思った。向田松院に祖父が名前をつけたというのはこういうことだったのかと。 では弟というのはと徳川が訊くと、 『向田清真は後妻の連れ子だ。その下の女の子が・・・ええとメイとかいう娘だったな。おれのアキラの字を書いてメイと読むんだと。寺の名前ってぇのは変わってるよなぁ。で、この娘は、そのやかましい親父と後妻の間にできた子だ。なんでも親父は女の子を欲しがっていたらしいからな。えらい喜びようだったらしいぜ』 弓削は徳川の猪口に熱燗を注ぎながら、 『これじゃあんまりだよなぁ。向田松院も清真も立つ瀬がないってもんだ』 徳川は黙ったまま弓削の猪口の熱燗を注ぎ返した。 『前の奥方も可愛そうに。どうしても女の子を授かりたかったんだろうよ。一縷の望みをかけて不貞を働いたのかもしれんな。その結果が男じゃあ、絶望して出て行きたくもなるだろうさ。いやいや。置き去りにされた松院が一番可愛そうなんだがなぁ。問題があったのは夫婦間のことだったっちゅうのに、子どもの松院が恨みの道具にされちまってよぅ。よくもまぁ真っ直ぐに育ったもんだ。それも爺さんたちの人徳か。仏さんのご加護かねぇ』 松院は清真をいたく可愛がっていたようだと徳川が言うと、 『清真が“兄ちゃん”と呼んでいたのは松院だけだったらしいぜ』
徳川は二本目の煙草に火を点けて深々と息を吸い込んだ。 「あの子が何したって言うんだよ・・・」 向田松院が就職して海外に出たのは、自分が寺に居るべき人間ではないと解かっていたから。海外赴任が決まって後、祖父が亡くなった。祖母は健在らしいが、実質、松院にはもう帰るところがなくなった。海外から弟清真の成長と成功を見守り続けることが松院にとっての生き甲斐だったに違いない。
弓削は言った。 『弟の清真と同じチームにいた奴に聞いたそうなんだがな、松院は弟への仕送りを欠かさなかったそうだ。その金を充てにしながら清真はレース活動をやっていた。レースってのは金がかかるそうだからな。清真のプロ入りが決まってから松院は会社を辞めて帰国したそうだ。弟をサポートするつもりだったんだろうよ。それがなぁ・・・可愛そうに』 弓削明は渋い顔をして猪口に注がれた熱燗を飲み干した。
『可愛そうに』と呟いた弓削刑事の顔が脳裏に浮かんで、徳川の心をヒリヒリさせた。徳川はやり切れない気持ちで煙草をねじ消した。 兄弟になって以来、手に手を取り合って、二人三脚でやってきた松院と清真。この義兄弟を不幸の淵に突き落とした輩に、徳川は言い表しようのない怒りを覚えていた。 (この代価、高くつくと思え。必ず潰してやる) 空になったセブンスターのボックスを握り潰して、徳川はベランダを後にした。居間に入ると加藤がソファの上に起き上がっていた。少し鼻をグズつかせている。 「寒くないか?」 「ん、平気」 今夜は少し冷えていた。もうじき本格的な梅雨の時期になる。 徳川は加藤の脇に腰掛けた。加藤の手を握ってみる。 「冷てぇぞ」 「大丈夫だって」 「おや?髪切ったか?」 「さっきの追いかけっこで面が割れたからね。途中で床屋に飛び込んだ」 「おまえは短い方がいい」 「そうかな。せっかく伸ばしてたのになぁ」 僅かに差す月明かりの中、加藤の顔が笑ったのが分かった。徳川が加藤の背中に腕を回すと、加藤は嫌がりもせずに身体を預けてきた。 「ヒロさん、組織として動くの?」 「いいや。拳銃の密造くらいで組織は動かせない」 「お客さんの数はどうなの?」 「今のところ変化なしだが、どうしてだ?」 「バックに外国が付いていないとも限らないなと思って。日本の国内市場じゃ知れているから。わざわざ作る意味が分からない。良品の少量生産には向いているけど」 彼らの言う“お客さん”とは、大陸由来のスパイやバイヤーのことだ。日本人に成りすましている彼らの数は意外と多い。それらの把握も徳川と加藤の属する“組織”の仕事の一環だ。 「蒼士の言うことには一理あるな」 「私情が絡んでるから動かないのかとも思ったけど」 「私情?」 「ヒロさん、しょーちゃんのこと好きなんでしょ?」 徳川はふと笑った。 「お喋りな口だ・・・・っと」 徳川は喋りながら加藤が横になっていた辺りを手先で探っていたのだが、ついに加藤のSTRAYER―VOIGTを探り当てた。 「インフィニティ・リミッテッドの6インチ。しかもシルバーモデルとは恐れ入ったね。どうやって持ち込んだ?」 「あはははは。企業秘密」 「ニコの入れ知恵か?」 「さあねぇ。僕みたいな下っ端でもこれくらいの芸当がなくっちゃ。で、ヒロさん、しょーちゃんのこと好きなんでしょ?」 徳川は加藤の頬を人差し指で突っついて、 「さあねぇ」 「まーたそういうこと言う。認めなよ」 「松院は仏の子だ。バチが当たらぁ」 「バチを当てるかどうかは仏様が考えることでしょーが」 「そりゃそうだが」 「西洋人がキリスト教なんてものを持ち込んでおかしくする前には、ニッポンでは認められてたんでしょ?」 「西洋人って、まるで他人事だな」 「僕はチャンポン人種のエセガイジンですよぅ」 徳川が笑っていると、加藤が肩口に頭を凭せ掛けてきた。 「あのさ、ヒロさん」 「ん?」 「誰かが誰かを好きになるのはいけないこと?」 「蒼士、あのなぁ・・・・」 勝手に決め付けるなよと言いかけた徳川だったが、加藤は 「しょーちゃんを不幸にした奴がヒロさんの分までバチ喰らえばいいんだ」 徳川は口元を緩ませて加藤を抱く腕に力を込めた。 「なるほど。そいつはいい考えだ」 そして徳川は思った。なるほどニコライはこういう性格に弱いのかと。いつも涼しいすまし顔の“白衣の聖人”が加藤蒼士を相手に表情を和ませているところが、なんとなくだが想像できたのだった。
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テーマ:自作BL連載小説
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