オヤジスキーどもの穴(連載小説用ブログ)
ゆずかほるの連載小説掲載用ページ。ここに掲載する小説には男性同士の恋愛および性描写が含まれますので、18歳未満の方・BL・やおい・同性愛等に不快感を抱かれる方は今すぐ退散してください。


プロフィール

ユズカホル

Author:ユズカホル
サークル名:BUCK÷STYLE/自称スケベビッチ・オヤジスキー。中学生の頃には既に自他共に認めるオヤジ好きを確立。よって小説の登場人物は平均年齢高め。ジャンルはハードボイルド系JUNE。ちょっと後ろ暗い感じのする小説を書くのが好み。
【イベント参加のお知らせ】
GOOD COMIC CITY 15 への参加が決定しました☆
08年8月30日(土)東京ビッグサイト
配置は東6ホール・タ・15aです。
立派な新刊はありませんが、コピー本だけは持参しようと頑張って執筆してます!内容はヒゲオヤジシリーズの番外編かな?お楽しみに〜v



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8 白煙の彼方へ(2/2)【最終回】
 長引いていた梅雨が上がった。
 山手には白い雲。真っ青な空の下、白いチェイサー・ツアラーVが東名高速道路を西から東へと突っ走っている。
 スピーカーから流れるハウンド・ドッグに耳を傾けながら、男は白髪の方が多くなってしまった頭を動かした。首の関節がコキリと鳴った。男はふとバックサイドビュー・ミラーに視線を移した。ぽつり、と明るいものが映りこんでいる。それはあっと言う間に距離を縮めてきた。
「来た、来た」
 昼間でも眩いハイ・ビームが、一瞬にしてチェイサーを抜き去って行った。赤い切っ先。独特の形状をしたテールランプ。
「ニンジャ1200・・・か」
 男は呟いてセブンスターを燻らした。
 思い返せば数ヶ月前、こうして男を抜き去って行ったNinja・900Rがいた。あの日は豪雨で、後も先も見えないような最悪の天候だった。
「どうしているのか・・・・」
 男は自分の元を去って行ったNinja・900Rの青年のことを想った。

 白いチェイサーは富士川サービスエリアに滑り込んだ。ガソリンの残量は充分で、男はそのまま駐車スペースにチェイサーを停めた。
「んっ!・・・イテテ」
 男は車から降りて伸びをした。長距離運転で腰が固まっている。
「お疲れさん」
 不意に背後から声をかけられた。男は驚いて振り返った。冷やされて結露したコーヒー缶が、男に向けて差し出されていた。受け取ろうとする男の手が、震えた。
「・・・松・・・院・・・か?」
「やだなぁ。分かんない?」
 短く刈った茶色の髪。ストレートのブルージーンズの余った細い身体。
「さっき追い抜いて行ったのは、おまえか?」
「あ、やっぱりヒロさんだったんだ。てろてろ走ってたからナンバーくらい見ればよかったな」
 向田が笑った。笑顔が輝きを増している。驚きの冷めやらない徳川は、ようやくの思いで笑みを返した。
「奇遇だな。どこかへ行く途中なのか?」
「うん」
 向田は意味深な笑みを浮かべた。
「言うなれば片道ツーリングかな。横浜に行くところ。就職を決めようと思ってさ。そこの社長がウロウロしてるなんて思いもしなかったんだけど」
「就職って・・・親御さんは・・・?」
「ちゃんと話してきた。ちゃんと向かい合って話ができたよ。ヒロさんのお陰。ありがと」
 徳川の眼前には、すっかり垢抜けた向田松院がいた。
 徳川は、しょうがないなという表情で、
「社長は、スピード狂はお断りだと言っていたぞ」
「オレには仏様の特典がついています。採用しないと爺ちゃんが化けて出ますよ」
「このやろう」
 徳川は舌打ちをしてニヤリと笑った。
 お互いに右手を差し出す。初めて会ったこの場所で二人は再会し、固い握手を交わした。
 これから先、どんな苦難が襲い来ようとも、二人でなら乗り越えてゆける。そんな未来への希望が繋いだ手の内に芽生えていた。


 忌まわしき過去は白煙の彼方へ―――
 青年は、新たな一歩を踏み出す。



 

◎ここまで読んでくださって、誠にありがとうございました!

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