オヤジスキーどもの穴(連載小説用ブログ)
ゆずかほるの連載小説掲載用ページ。ここに掲載する小説には男性同士の恋愛および性描写が含まれますので、18歳未満の方・BL・やおい・同性愛等に不快感を抱かれる方は今すぐ退散してください。


プロフィール

ユズカホル

Author:ユズカホル
サークル名:BUCK÷STYLE/自称スケベビッチ・オヤジスキー。中学生の頃には既に自他共に認めるオヤジ好きを確立。よって小説の登場人物は平均年齢高め。ジャンルはハードボイルド系JUNE。ちょっと後ろ暗い感じのする小説を書くのが好み。
【イベント参加のお知らせ】
GOOD COMIC CITY 15 への参加が決定しました☆
08年8月30日(土)東京ビッグサイト
配置は東6ホール・タ・15aです。
立派な新刊はありませんが、コピー本だけは持参しようと頑張って執筆してます!内容はヒゲオヤジシリーズの番外編かな?お楽しみに〜v



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1 秋袷(あきあわせ)(1/5)
連載小説2 『黍嵐(きびあらし)』
第1章 秋袷(あきあわせ)(1/5)

<プチ余談>
 前作『白煙』では、向田松院のことを『向田』と表記していましたが、
 本作品では『松院』としています。シナリオを意識したわけではないん
 ですが、ヒロインは名前で書くものかな〜と(笑)

お読みになる方は、下の read more をクリックしてください。


 真っ青な空。山手には白い雲。
 白いチェイサー・ツアラーVの後に続いて、真っ赤なNinja1200が走行車線に滑り込んだ。4速、5速、6速と、滑らかな加速を経て、車の流れに溶け込む。
 富士川SAを後にした2台は、後になり先になり、ランデブー走行をしながら東名高速道路を西から東へと駆けていく。
 富士IC―横浜IC間、約100kmの道程。2台で追いかけっこをやっていれば、あっという間の距離だ。

 2台が横浜市内に入ったときには、夕日が眩しく映るようになっていた。Ninjaのオーナーはヘルメットのシールドの下で眩しそうに目を細めた。そして、横浜の街を走るのはこれがまだ二度目だなぁなどと、ヘルメットの中で呟いた。
 白いチェイサーが交差点に差し掛かったとき、ちょうど信号の変わり目だった。
 黄色から赤へと光のサインが移動する。
 追走していた真っ赤なNinjaは、ブレーキをかけるどころかシフトダウンしてそのまま交差点に突っ込んだ。そして、更にもう一台、小型のスポーツカーが追走してきた。
 その時、
ヒュウゥッ!!
 サイレンを鳴らして赤い回転灯が飛び出してきた。
 Ninjaは車体をひらりと翻して逃げおおせたが、小型のスポーツカーは路肩に停車させられてしまった。

 ***

 マンションのガレージの中に赤いNinjaが納まったことを確認してから、白いチェイサーの運転手はリモコンのボタンを押した。ゆっくりとガレージのシャッターが降り始める。
 白いチェイサーの運転手、徳川博康は車外に出てドアに施錠した。よく磨かれた白い車体に、真っ赤なNinjaの車体とすらりとした青年の姿が映りこんでいる。
「おい、松院。さっきはヒヤッとしたぞ」
 Ninjaのオーナー、向田松院が白い歯を覗かせた。
「あはは。後ろのおねーちゃんがノロマだったから。運がよかった」
「そういう問題じゃない」
「あれ?ベンベ(BMW)は?」
「話を逸らすな」
「いや、マジ。どうしたの?」
「車検だ」
「ならいいや。安心した」
「俺が事故るとでも?」
「どうだかねぇ」
「こら」
 エレベーターを使って最上階にある徳川の部屋に向かう。
「荷物はそれだけか?」
「うん」
 松院が手にしているのはAraiの黒いヘルメットとタンクバッグだけだった。
「必要最小限。それで、就職試験のことなんだけど」
「スピード狂と運転の荒い奴はお断りだ」
「だーっ!もう!ハイ、反省してます。ごめんなさい!」
 荷物を手にしたまま両手を合わせる仕草をして頭を下げた松院を見て徳川がふと笑った。
「就職は結構だが・・・何かあったのか?」
「えっ?」
「いや、なんでもなければいいんだ」
 沈黙が訪れて数秒後、エレベーターが最上階に着いた。
 徳川が玄関のドアを開けた。徳川に促されて松院は先に中に入った。玄関で立ち尽くしたまま部屋の中を見回す。殺風景ではないが、実にさっぱりとした部屋の様子は少しも変わってはいなかった。
「あがってもいい?」
「ああ」
 靴を脱いでいる松院の背後で徳川がドアに施錠をした。
「?」
 松院が徳川を振り仰いだ。徳川の大きな手が、短く刈った茶髪に触れたからだ。
「なに?」
「いや、短くしちまったんだなと思ってね」
「人生の仕切り直し。さすがに丸坊主にはできなかったけど」
「おまえにボーズは似合わねぇよ」
「あはは」
 松院の顔が笑い顔から戸惑いの表情に変わった。徳川に片腕で抱き寄せられたのだ。徳川の匂いが鼻をくすぐる。愛用しているウィークエンドと、微かな煙草の香り。喉まで出掛かった『ヒロさん』と名を呼ぶ言葉を松院は飲み込んだ。
 短い沈黙の後、徳川が松院の尻をぽんと軽く叩いて身体を離した。
「入ってくれ」
 リビングに入っても松院が立ち尽くしているのを見て徳川は、
「どうした?何をかしこまっているんだ?」
「そんなんじゃないよ。まだ感覚が戻んないんだってば」
「ゆっくりしていろ。とりあえずコーヒーでいいか?」
 松院は徳川に両手を向けて、
「そんな!お客さんじゃないんだから放っておいていいってば!ってーか、オレがコーヒー淹れるから。ね?」
「いいから座ってろ」
 徳川はキッチンでコーヒーメイカーのセッティングを始めた。
 リビングの端っこにヘルメットとタンクバッグを置いて、松院はソファに腰掛けた。上等な革張りのソファにこれまでの疲れを吸い取られるような感覚があった。いくら大好きなオートバイでも、丸一日跨っていたのではさすがに辛い。オートバイのシートはお世辞にも座り心地が良いとは言えない。尻だって痛くなる。
「はぁ〜・・・」
 ソファの上で片膝を抱えて、松院は溜息をした。
「疲れただろう?」
「あ、うん。まぁね」
 松院は抱えた膝に額を押し当てて、再び小さく溜息を漏らした。
 疲れだけではなかった。思惑が外れて、松院は少し凹んでいたのだ。

 入梅する少し前に、徳川博康と向田松院は偶然出会った。豪雨の中、富士川SAで徳川が松院に声をかけたのがファースト・コンタクトだった。
 松院は可愛がっていた弟を亡くしたばかりだった。おまけに拳銃の密造・密売という難しい事件の片端を負っていた。弟が、知らずともよくない仕事に加担していたことは、薄々だが感じていたことだった。何とかしなければ――そう思っている間に弟は事故死してしまった。
 愛する弟を突如失った衝撃と、胸に秘めた重すぎる秘密。
 食事も喉を通らない日々が続き、挙句に父親と大喧嘩をして家を飛び出した。このまま愛車と運命を共にできれば本望と、ただただアクセルを振り絞って豪雨の中を突っ走った。
 そんな松院を手元において面倒を見てくれたのが徳川だった。徳川の大きな心に包まれて、松院は立ち直ることができたのだった。
 共に暮らすうちに、松院はどうしようもなく徳川に惹かれていった。そして――
 松院は再び溜息をついた。
(期待しすぎたかなぁ・・・)

=====
See you next time!
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ゆずぶろ【2008/05/02 19:30】





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