オヤジスキーどもの穴(連載小説用ブログ)
ゆずかほるの連載小説掲載用ページ。ここに掲載する小説には男性同士の恋愛および性描写が含まれますので、18歳未満の方・BL・やおい・同性愛等に不快感を抱かれる方は今すぐ退散してください。


プロフィール

ユズカホル

Author:ユズカホル
サークル名:BUCK÷STYLE/自称スケベビッチ・オヤジスキー。中学生の頃には既に自他共に認めるオヤジ好きを確立。よって小説の登場人物は平均年齢高め。ジャンルはハードボイルド系JUNE。ちょっと後ろ暗い感じのする小説を書くのが好み。
【イベント参加のお知らせ】
GOOD COMIC CITY 15 への参加が決定しました☆
08年8月30日(土)東京ビッグサイト
配置は東6ホール・タ・15aです。
立派な新刊はありませんが、コピー本だけは持参しようと頑張って執筆してます!内容はヒゲオヤジシリーズの番外編かな?お楽しみに〜v



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1 秋袷(あきあわせ)(2/5)
連載小説2 『黍嵐(きびあらし)』
第1章 秋袷(あきあわせ)(2/5)

<プチ余談>
 ダンナさまが遅い昼寝をしている間にUPしようと焦っているのに、
 バックグランドでウィルス定義の更新か何かが立ち上がっていて
 PCバリ遅!ひっぱたきたくなるくらい遅い!フンガーー!!

お読みになる方は、下の read more をクリックしてください。


 松院は、玄関のドアを閉めるや否や、徳川が抱き締めてくれるものだとばかり思っていた。いや、これに関しては全く外れていたというわけではなかったのだが。しかし、松院が求めていたのは挨拶程度のHUGではなく、そればかりか、熱っぽく口付けすら期待していたのであって・・・・。それなのに、徳川の態度はいやにアッサリしていて、松院は肩透かしをくらってしまったのだった。
(盛ってンのはオレだけ?バッカみてぇ)
 松院はソファから立ち上がると、サッシを開けてバルコニーに出た。夕焼けから夜の闇へと移り変わる、絶妙なタイミングだった。
 松院は思わず『うわぁ』と声を漏らして天を振り仰いだ。そのままバルコニーの柵に寄りかかって、短く刈った茶髪をくしゃりと掴んだ。徳川に触れられた感覚が、ほんの僅かだが蘇ってきた。
(そりゃあ、寝たのは二回こっきりで、もう一ヶ月以上ブランクがあるんだから・・・・)
 別れて以来、今日の今日まで音信不通だった。実家の寺で、両親や兄たちとの間にあった溝を自分なりに埋めてきた。百パーセントではないにせよ、満足のいく形に納まったと思っている。このことを話せば徳川も喜んでくれるだろうと思っている。
 それに、『別れた』という感覚はなかった。離れていても徳川のことは一日たりとも忘れたことなどなかった。いつかまた会えると思って今日までやってきた。
 本気で就職を決めようと思った。横浜にある、徳川の経営する酒類販売店に直行するつもりで、東名高速道路を突っ走ってきた。徳川を突然訪ねて驚かせてやろうという悪戯心もあった。こんなにもわくわくしながら走るのは久し振りのことだった。
 途中、富士川SAに立ち寄ることは最初から決めていた。徳川と初めて会った、思い出の場所だからだ。降りしきる雨の中、捨てられた犬のようにうずくまっていた松院に、暖かいコーヒー缶を差し出して話しかけてくれたのが徳川だった。人懐こそうな笑顔と、嫌味のない馴れ馴れしさ。今思い出しても心の奥がほっこりと暖かくなってくる。
(まさか今日も富士川で会うなんて思いもしなかったなぁ)
 松院は眉尻を下げてふふと笑った。午後の強い日差しの中、冷たいコーヒー缶を差し出したときの、徳川の驚いた顔が思い出されて、松院はまたふふと笑った。
「松院?」
 不意に名を呼ばれて、松院はびくりとした。振り返ると、カップを二つ手にした徳川が立っていた。
「何を黄昏ているんだ?」
「うん、ちょっとね」
 コーヒーカップを受け取って口元に運ぶ。キリマンジャロの芳香が松院の鼻をくすぐった。
「この分だと明日もいい天気だな。いいことだ。ビールの売り上げが伸びる」
 次第に闇を増して行く空を見詰めながら徳川が呟いた。
 彫りの深い顔立ち。ロマンスグレイの髪。同じ色の口髭。極端に色の薄い、鳶色の瞳。日に焼けて赤みの差した肌。右手首につけたOMEGAが本当によく似合っている。Speed Masterという名のゴツイ腕時計は、貧弱な身体つきの人間には似合わない。
(相変わらず格好いいなぁ・・・)
 松院は徳川の姿をぼんやりと見つめた。その視線を感じてか、徳川が松院を振り返った。
「松院」
「ん?」
「おまえ、いつまで居られる」
 唐突に訊かれて、松院はどきりとした。
「えっ、なに、いつまで・・・って?」
「ここにはどれくらい居られる?」
 松院は血の気が引きそうになった。
「それって・・・不合格だってこと?」
「そうは言っていない」
 松院の心臓は痛いくらいに打っていた。しまったと思ったが、もう遅かった。
(ヒロさん、一緒に住んでるひとがいるんだ)
 どうしようという思いが松院の脳裏を駆け巡った。一方的な思い込みで、連絡もせずに押しかけてきたことを今更後悔しても遅い。
「ごめん、ヒロさん。オレが来たの、迷惑だった?」
「そんな風に見えるか?」
「でも・・・長居しない方がいいんでしょ?」
 コツリという音。徳川がバルコニーの柵の上にカップを置いた音だった。
 徳川に見詰められているのが分かったが、気まずさが消えない松院は目を伏せたままだった。
「いや・・・信じられなくてな。おまえが目の前に居るってことが信じられない。富士川で会って、ここまで並んで走ってきて、こうして話をしているっていうのに。運転しながら何度もミラーを見た。ふとした拍子におまえの姿が消えちまってるんじゃないかと思って」
「消えちまってた方がよかった?」
「そんなことは言ってないだろう」
「でも・・・」
「でも?」
「・・・・いつまで居られる、なんて訊くってことは、長居しない方がいいんでしょ?」
 徳川が短く吐息を漏らした。
「ああ、そうか・・・言い方が悪かったな。ただ本当に気になってな。また家で何かあったて飛び出してきたんじゃないかと」
 徳川の言葉に、松院は小さく頭を動かして『否』と応えた。
「親父がくれぐれも社長さんには迷惑をかけるなよって。就職が内定したら、婆ちゃんが荷物とか送ってくれることになってる」
 松院は徳川の顔を見た。視線が絡まる。徳川の優しい視線が自分に向けられている。心の中に芽生えていた不安が急速に小さくなって、期待へと摩り替わっていく。
「オレ・・・居てもいい?できれば長く居たいんだけど・・・」
 徳川は小さく頭を動かすと、松院に向けて右手を差し出した。意を解せずにいるのか、躊躇っているのか、松院は徳川を見詰めたまま突っ立っている。
 徳川は一歩踏み出すと、松院を半ば強引に抱き寄せた。
 松院は徳川にきつく抱き締められた。徳川の広い背中に腕を回す。ああ、この感覚だと、松院は目を閉じた。大きくて暖かくて、包み込んでもらえる安心感。そして、内面には底なしの暗い穴を隠している不安感―――
「おかえり」
 空気のような囁きに、松院は目を見開いた。
待っていてくれた。帰る場所はここだと言ってくれた。徳川の言葉が心に染み渡る。松院は徳川の腕の中で表情を崩した。鼻の奥がツンと痛くなる。返す言葉が見つからなくて、松院はただ小さく頭を動かした。

=====
See you next time!

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ゆずぶろ【2008/05/03 19:06】





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