オヤジスキーどもの穴(連載小説用ブログ)
ゆずかほるの連載小説掲載用ページ。ここに掲載する小説には男性同士の恋愛および性描写が含まれますので、18歳未満の方・BL・やおい・同性愛等に不快感を抱かれる方は今すぐ退散してください。


プロフィール

ユズカホル

Author:ユズカホル
サークル名:BUCK÷STYLE/自称スケベビッチ・オヤジスキー。中学生の頃には既に自他共に認めるオヤジ好きを確立。よって小説の登場人物は平均年齢高め。ジャンルはハードボイルド系JUNE。ちょっと後ろ暗い感じのする小説を書くのが好み。
【イベント参加のお知らせ】
GOOD COMIC CITY 15 への参加が決定しました☆
08年8月30日(土)東京ビッグサイト
配置は東6ホール・タ・15aです。
立派な新刊はありませんが、コピー本だけは持参しようと頑張って執筆してます!内容はヒゲオヤジシリーズの番外編かな?お楽しみに〜v



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2 寒露(かんろ)(1/5)
連載小説2 『黍嵐(きびあらし)』
第2章 寒露(かんろ)(1/6)

<余談>
 本日から新章です!
 向田松院くんは果たして社員になれたのでしょうか?

お読みになる方は、下の read more をクリックしてください。
 松院が徳川と暮らすようになって2ヶ月余りが過ぎた。再会した頃には蝉時雨がうるさいほどだったが、声の主は次第にツクツクホウシへと移り、今では秋の虫が涼しげな歌声を響かせている。尾張でも田舎の方の育ちである松院は、五感で季節の移り変わりを追うことに長けていた。
 さて、肝心の「就職試験」だが、松院は書類審査を無事に通過し、社長面接もパスした。採用の決め手は語学力だった。松院は英語が堪能で、マナーもよくできていた。前職は貿易関係だったので当然といえばそうなのだが。現在は(有)徳川酒類販売店の正社員、しかも幹部候補として働いている。付け加えると、徳川の会社には正社員が3人しかいない。社長の徳川と事務員の本多、そして松院だ。これが『幹部候補』たる所以でもあった。
 松院はアルバイター受けも良かった。徳川が採用する非常勤職員は大学生が殆どで、年齢が近くて面倒見の良い松院はすぐに彼らに慕われるところとなったのだ。今ではすっかり『ショウさん』という呼称が定着していた。
 そんな具合で、松院と徳川は公私共に充実した関係を保っていた。

 営業用のカローラが事務所の前に停まった。黒いソフトスーツ姿の松院が降り立つ。松院は上着を脱いでネクタイを緩めながら事務所へと続く狭い階段を上った。
「ただいまぁ」
 事務室に入ると女性が2人振り返った。事務員の本多とアルバイターの純子だ。純子は大学を卒業して2年になるが、徳川の会社で非常勤として働いていた。ちょっとした美人の彼女は会社の看板娘だった。
「おかえりなさい。車、暑かった?」
「あぢいのなんのって。明日が寒露だなんて信じらンないよ」
「カンロ?」
「二十四節季。知ンないかな?」
 電話応対をしながら、本多が『あっち』と指差した。気付いた純子が『あっ』という表情になる。
「しょーちゃん、冷蔵庫に梨があるけど、食べる?」
「うわぁ〜!いただきます!」
「じゃあ剥いてくるね」
 純子が給湯室に消えた頃、本多が受話器を置いた。
「はぁ、長かったわぁ」
「お疲れ様です。ただいま帰りました」
「しょーちゃんもお疲れ様ね。外回りはもう終わり?」
「はい。今日のところは」
 初対面の時から本多は松院のことを『しょーちゃん』と呼んだ。この小柄で丸っこいおばちゃんに『しょーちゃん』と呼ばれるのは、松院にとってなんだか心地よかった。
「そうよ。寒露だなんて、よく知ってるわねぇ」
「はぁ?」
「さっきの話よ。ほら、純子ちゃんと」
 松院は『ああ』という表情になった。
「うち、寺ですから。そういうのは、やっぱりね」
「そうだけど、普通は節分とかそういうのしか知らないもんじゃないかい?」
「まぁ、そうですね」
 本多が微笑んだ。
「ヒロちゃんもいい子を採用してくれたもんだわ」
 本多は社長の徳川のことを『ヒロちゃん』と呼んでいた。
 照れて身の置き所がなくなってしまった松院は、席を立って上着掛けのところに行った。内ポケットから革の名刺入れを取り出す。20枚ほど入れた名刺の一番奥に写真を一枚入れている。甲州まで葡萄の出来具合を視察に行ったときに撮ったものだった。明るい緑色の葡萄棚をバックに、徳川と2人で写った写真。
 松院は名刺入れから写真を取り出して眺めた。
 徳川との関係には満足している。会社にあっては社長と従業員としてツーカーの仲になりつつある。分からないことがあったら、本多も純子も丁寧に教えてくれる。お得意さんや組合の役員にも顔と名前を憶えてもらって、今では名指しで電話が掛かってくることも増えた。
 そして、プライベートでも。食事はできる限り松院が用意して、徳川と一緒に食べることにしていた。徳川が忙しくて一緒に食事ができないときには、早めに連絡をよこしてくれた。受け応えを脇で聞いていた本多に若夫婦を見ているようだと言われて苦笑いをしたこともある。このおばちゃんには2人の性生活まで見抜かれているようで、冷や汗モノの苦笑いしか出てこなかった。
「しょーちゃん、梨食べよ」
 純子の声で、松院は写真を名刺入れに仕舞った。
 純子が剥いてくれた梨はよく冷えていて美味だった。最初の一切れを頬張った松院が両頬を押さえて顔をしかめた。
「どうしたの?」
 松院はもぐもぐしてから
「いや、ホラ、急に美味いもん食ったら、ほっぺたにツーンとくるでしょ?きたきたきた!って感じで」
 純子が笑い出した。
「解る、解る!痛いよね、あれ」
 笑い上戸で目も小さい純子は、目じりに滲んできた笑い涙を指先で拭っている。
 ガラスの皿に盛られた梨は、あっという間に最後の一切れになった。
「純子ちゃん食べなよ」
「あたし、もういい」
「じゃあ、おばちゃんは?」
 本多が目を閉じて『あーん』と口を開けた。
「しょーちゃんが食べさせてぇ〜」
「これってセクハラじゃないっすか?」
 楊枝に刺した梨を恐る恐る差し出す松院を見て、純子が笑い転げる。オバタリアンに迫られて怯えている新米職員の構図がツボにはまったらしい。
「甘露、甘露」
本多は満足げな表情で最後の一切れを味わった。

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See you next time!v(^o^)v
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ゆずぶろ【2008/05/09 20:41】





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