オヤジスキーどもの穴(連載小説用ブログ)
ゆずかほるの連載小説掲載用ページ。ここに掲載する小説には男性同士の恋愛および性描写が含まれますので、18歳未満の方・BL・やおい・同性愛等に不快感を抱かれる方は今すぐ退散してください。


プロフィール

ユズカホル

Author:ユズカホル
サークル名:BUCK÷STYLE/自称スケベビッチ・オヤジスキー。中学生の頃には既に自他共に認めるオヤジ好きを確立。よって小説の登場人物は平均年齢高め。ジャンルはハードボイルド系JUNE。ちょっと後ろ暗い感じのする小説を書くのが好み。
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2 寒露(かんろ)(2/5)
連載小説2 『黍嵐(きびあらし)』
第2章 寒露(かんろ)(2/6)

<余談>
 言い忘れたかもしれないことが。
 この小説の季節的な背景は、晩夏〜秋がメインで、最終的には年末まで入ります。
 今とまったく逆です(汗)

お読みになる方は、下の read more をクリックしてください。

 3人が秋の味覚を堪能し終わって、それぞれの仕事に戻ったときだった。事務所の外でエンジンの音がした。会社の敷地に車が乗り入れてきたようだ。
 松院はノートパソコンのキーボードを叩きながら窓の方を一瞥した。つられて純子も窓の方を見た。
「誰か来た?」
「ヒロさんだよ」
 松院が即答すると、純子が笑った。
「出ました。ヒロさん探知機!」
「なんだよそれぇ」
「だーって、しょーちゃんてば何しててもヒロさんのことだけは判るんだもん」
「まーねー」
 当たり前じゃんと松院は心の中で呟きながらパソコンの画面に視線を戻した。
 足音が階段を上がってくる。それは廊下を伝って、
「ただいま戻りました」
 額の汗をハンカチで拭いながら徳川が事務所に入ってきた。色素の薄い徳川は、顔を紅潮させていた。
「お帰りヒロちゃん。暑かったみたいだね」
「いやぁ、参りましたよ。エアコンで冷えちまって、窓を開けて走ったら今度は大汗かいて」
「朝晩は冷えるようになったんだけどねぇ。どれ。梨でも剥いてあげようかね」
「梨ですか。いいですね。いただきます」
「ちょいと待ってておくれね」
 本多はよっこらしょと椅子から立ち上がった。丸っこい小さな背中が事務所を横切っていく。
「おまえたちは?」
「もういただきました」
「美味かったッスよ」
「ね」
 純子に向けて『そうか』という表情をしながら、徳川は松院の脇へ回り込んだ。
「松院。なべちゃんが何か用があるとか言ってたぞ」
「はい?」
 松院は徳川にことわってから席を立った。
 アルバイターの『なべちゃん』こと渡邊は、24本入のビールのケースを配達用のトラックに積み込んでいる最中だった。松院が要件は何かと訊くと、渡邊は松院を拝んでこう言った。
「合コンに出てくれませんか?マジでお願いします。マジで」
「合コンって、あーた」
「ショウさんみたいなイケメンがメンツに入ってくれたら、ホントに心強いンスよ。ねっ?」
「イケメンだったら他にいるじゃん」
「えっ?誰?」
「社長」
 松院の返答を聞いた渡邊がブッと吹いた。
「だめッス!『三高』の中に歳が入っちゃってます!」
 松院は、上手いこというなぁと言ってから、
「なべちゃんだってカッコイイじゃんよ。スポーツマンって感じだし、背だって高いしさぁ」
「いや、綺麗所がほしいンスよ」
「う〜ん・・・・」
 綺麗所だのイケメンだのと言われて悪い気はしないのだが、松院はイマイチ乗り気になれないでいた。徳川の反応が気になるといえばそうなのだが、理由はもっと複雑だった。
 ここのところ特に徳川は忙しくしている。朝から晩まで外出し通しといっても過言ではない。松院たちが退社する頃になって帰社すれば早い方で、それから社長としての事務をこなすのだ。松院が残って手伝うことのできる業務にも限界があるわけで――つまりは擦れ違いの連続のような日々を過ごしていたのだった。
 だからといって松院の徳川に対する気持ちが変わるはずもなかったのだが、さすがに、なんと言うか、口では言い表せないようなモヤモヤが蓄積していることは事実だった。しかし、鬱憤晴らしに合コンに参加するなどというのは、あまりにも安直過ぎて乗り気になれなかったのだ。
「だってさぁ。オレ、もういい歳だぜ?シャワーのお湯だって弾かなくなってくる歳っつーか」
 渡邊は、なんですかそれと笑いこけてから、
「あ、ショウさん。ひょっとして彼女とかいます?」
「いねぇよ。てぇかさ、いたって頼むつもりなんだろ?」
「あは。そうです」
 松院はやる気なさそうに溜息をついてから、
「分かった。出るよ。で?可愛い娘が来るんだろうな?」
 渡邊は『もちろん』と応えながら視線を泳がせた。
「あれ?ヒロさん、また出かけるんですか?」
 渡邊に声を掛けられて、徳川は『ああ』と応えた。
「梨くらいゆっくり食わせてほしいよ」
「ヒロさん」
 今度は松院が声を掛けた。
「なべちゃんが合コンに出てほしいんだって!」
「考えとくよ」
 ヒラヒラと手を振りながら白いチェイサー・ツアラーVに乗り込むと、徳川はまた出て行ってしまった。

   ***

 会社へは戻らないと電話で伝えてきた徳川に代わって、松院が戸締りをすることになった。事務所とは別棟になっている倉庫を一巡して、最後にワインの貯蔵庫の温度を確認する。それから事務所に戻ってセキュリティ・システムをオンにする。最後に駐車場の前をチェーンで仕切って、はいサヨウナラである。
 何かと忙しい徳川に代わってやっているうちに、すっかり当たり前の動作になってしまった。それでも小さな物音でもしようものなら心拍数が跳ね上がってしまう。徳川が背中を刺された現場は、他でもない。この会社の敷地内でのことだったからだ。

 降りしきる雨。暗がり。不気味に光る刺客の目――
 
 一点を見詰めていた松院は、小さく頭を振った。
 スラックスの裾をマジックテープ式のベルトで留めてから、松院は赤いNinjaに跨った。伸ばしかけの茶色い髪を軽くかき上げてからヘルメットを被る。
 オン!オン!
 咆哮を二度響かせて、赤いNinjaは街灯の滲んだ路地を走り抜けていった。

=====
See you next time!

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ゆずぶろ【2008/05/10 20:15】





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