オヤジスキーどもの穴(連載小説用ブログ)
ゆずかほるの連載小説掲載用ページ。ここに掲載する小説には男性同士の恋愛および性描写が含まれますので、18歳未満の方・BL・やおい・同性愛等に不快感を抱かれる方は今すぐ退散してください。


プロフィール

ユズカホル

Author:ユズカホル
サークル名:BUCK÷STYLE/自称スケベビッチ・オヤジスキー。中学生の頃には既に自他共に認めるオヤジ好きを確立。よって小説の登場人物は平均年齢高め。ジャンルはハードボイルド系JUNE。ちょっと後ろ暗い感じのする小説を書くのが好み。
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2 寒露(かんろ)(4/5)
連載小説2 『黍嵐(きびあらし)』
第2章 寒露(かんろ)(4/6)

<余談>
 モバイルでも読めるように設定しました。
 でも文字数が多いと思うので・・・大丈夫なんだろうか?
 (ワタシ、モバイルは明るくなくて。原則アナログ人間なんですー。)

お読みになる方は、下の read more をクリックしてください。


 短く刈った髪をツンツンに立てた小柄な男が立っていた。岩跳びペンギンを髣髴とさせる愛嬌のあるルックス。
「梶木先生!」
 梶木達矢は医者だ。総合病院で外科の勤務医をしている。数ヶ月前の事件の際に、松院は梶木の世話になっていた。徳川の肩口の傷を綺麗に治したのも梶木だ。
「ヒロさんの会社にいるって聞いてはいたんだけど」
「すみません。ご挨拶にも伺わずに」
「うわぁ〜。なんか喋り方が『会社の人』って感じ。しかもスーツなんて着ちゃってさぁ」
 松院は、あはと笑った。そんなやり取りを見ながら香奈がビールの中ビンの栓を抜いた。
「なーにが会社の人よ。さっきまで女子大生と合コンしてたくせに」
「合コン!なーんでおれを誘わないかなぁ」
「梶木先生だったら選り取りミドリでしょう。学歴、地位、金。三拍子揃ってるんだし」
 梶木のグラスにビールを注ぎながら香奈が言った。
「でも、たっちゃんは漫才の名台詞だもんねぇ」
「何それ」
「あたしゃも少し背が欲しい」
「香奈ちゃんが言うかなぁ」
「あたしはいいの。ちっちゃいのが売りなんだから」
「おれもちっちゃいので売ってるんだけどなぁ」
「買い手がつくまで頑張らなきゃねぇ」
「お互いにねぇ」
 まるで夫婦漫才を見ているようだ。松院は笑いながらグラスを傾けた。
 梶木と肩を並べてしばらく飲んでいると、一組の客が店を出て行った。それと殆ど入れ替わりで次の客が入ってきた。中背の青年が1人。梶木は彼を一瞥してからグラスを置いた。
「向田くん、ちょっとごめんね」
「あ、はい」
 そういえば待ち合わせがどうとか言っていたなと松院は思った。
 梶木は青年を伴って空いた奥の席に移動した。
 薄暗い店内のこと、梶木と青年が何を話しているのか松院には分かろうはずもなかった。しかし、そこで話されていたことは後に松院にとっても重要な意味を持つこととなる。

 30分くらい話し込んでから、青年は店を出て行った。
 空いたグラスを下げに行った女の子が松院のところへやってきた。
「タツヤ先生がちょっと来てとおっしゃってますよ」
 松院はスツールから腰を上げた。
「悪いね。呼び寄せて」
「いえ」
「香奈ちゃんの前じゃ話しにくいこともあってね」
「はぁ」
 松院は梶木の空いたグラスにビールを注いだ。次第に満たされていくグラスを見詰めながら梶木が呟くように言った。
「訊いてもいいかな。弟くんの事件だけど、その後どうなった?」
 一瞬の沈黙。
 松院は『うーん・・・』と鼻の奥を鳴らしながら首をかしげた。
「解決した・・・とは言い切れません。弓削さんも、地元の県警の刑事さんたちも一生懸命やってくださっているみたいなんですけど。映画みたいにスパッと解決するもんじゃないみたいですね」
「そう。・・・きみはもう大丈夫?」
「ええ。でも、やっぱ寂しいです」
 松院は水割りのグラスを傾けた。
「地元で何度かサーキットにも足を運んだんですけど、探しちゃうんですよね。弟が走ってるんじゃないかなって」
「そっか・・・こればっかりは・・・・ね」
 松院は『ええ』と頷いた。
 梶木は松院の空いたグラスを持ち上げるとカウンターに向けて軽く振って見せた。店の女の子が小さく頷いた。
「ヒロさんとは上手くいってる?」
「ええ、まぁ。仕事の方も順調ですし」
「そう。夜も?」
 松院はブッと吹いた。
「なんで香奈さんと同じこと訊くんですか!2人まとめてセクハラで訴えますよ」
「まぁまぁ。おれ、そーいうのに偏見ないからさ」
 梶木は笑いながらビールのグラスを傾けた。
「ヒロさんのこと、好き?」
「はぁ」
 面と向かって言われるとさすがに照れるというか。松院は変な汗をかいていた。そんなことを知るはずもなく、梶木は続けた。
「いや、余計なお節介だとは思うんだけどさ。できるだけ長く一緒に居てあげてくれないかな」
「ええ。出て行けって言われるまで居座るつもりですけど」
 梶木はくすと笑ってから、
「あのひと、寂しがりだからさ」
「はぁ?」
 松院は目をぱちくりした。
「冗談!オレ、あんなに強いひとは他に知りませんよ。ナイフ振り回すわけわかんない野郎にも素手で立ち向かって行くんですよ?メチャ強いっていうか、半端なひとじゃないなって」
「まぁね。でもそういう『強さ』だけじゃないだろ?人間は」
「でもヒロさん、寂しがりなんかじゃ――」
 梶木は『いいや』と首を振った。
「真実くんのことは知ってる?」
「ええ・・・一応」
「あのときみたいになってほしくないんだよね」
 梶木はグラスを弄んだ。
「何回も点滴打ちに行ったんだよ。ヒロさんの家まで」
「・・・・・」
「おれもさ、あのひとは凄く強い人だと思ってた。あの体格だし、いつでも快活としてるしね。でも真実くんを亡くしてから、あのひとにも物凄く弱いところがあるんだって気付かされちゃったんだ。ああ、このひとも普通の人間なんだな、ってさ」
 松院は人づてに聞いて知ってはいた。真実の死後、徳川は食事が喉を通らないほどに憔悴しきっていたと。しかも梶木が点滴を打ちに出向いていたと聞いては、徳川の落ち込みようは相当なものだったと思われた。徳川の有様を思うと松院は胸が痛んだ。同時に徳川にとって真実の存在が非常に大きなものだったのだと、松院は思い知らされたのだった。
 梶木は身を乗り出して松院の目を見た。
「だから居てあげてよ。今のヒロさんは向田くんが支えてる。ヒロさんにとって、向田くんの存在は真実くん以上に大切なものになっていっていると、おれは思うんだよね」
「そうかな・・・オレなんかでいいのかな・・・」
「付き合いの長いおれが言うんだからさ。信じてよ」
「はぁ・・・」
 それから梶木はにっこりして、こう付け加えた。
「永久就職が決まったら、こっそり教えてね。御祝儀はずむから」

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ゆずぶろ【2008/05/13 18:43】





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