オヤジスキーどもの穴(連載小説用ブログ)
ゆずかほるの連載小説掲載用ページ。ここに掲載する小説には男性同士の恋愛および性描写が含まれますので、18歳未満の方・BL・やおい・同性愛等に不快感を抱かれる方は今すぐ退散してください。


プロフィール

ユズカホル

Author:ユズカホル
サークル名:BUCK÷STYLE/自称スケベビッチ・オヤジスキー。中学生の頃には既に自他共に認めるオヤジ好きを確立。よって小説の登場人物は平均年齢高め。ジャンルはハードボイルド系JUNE。ちょっと後ろ暗い感じのする小説を書くのが好み。
【イベント参加のお知らせ】
GOOD COMIC CITY 15 への参加が決定しました☆
08年8月30日(土)東京ビッグサイト
配置は東6ホール・タ・15aです。
立派な新刊はありませんが、コピー本だけは持参しようと頑張って執筆してます!内容はヒゲオヤジシリーズの番外編かな?お楽しみに〜v



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4 白菊(しらぎく)(2/8)
連載小説2 『黍嵐(きびあらし)』
第4章 白菊(しらぎく)(2/8)


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 徳川は、沼津の得意先に行くという名目で会社を出て、その足で箱根の別荘に寄った。周りの車には細心の注意を払ったが、今回は尾行されている様子はなかった。
 石造りの別荘。バラス敷きの前庭にBMW ALPINA B3を乗り入れた。
 ガレージには美峰女史のRANGE ROVERが駐車されていた。大型のRV車が入り込むと、さすがにガレージが狭く映った。
 BMWがバラスを踏む音を聞きつけて、海棠が飛び出してきた。徳川は車を降りて、後部座席のドアを開けた。
「海棠。ほら」
 徳川は海棠に果物籠を手渡した。
「あ、でもチーフ。蒼士さん、まだ食べられないみたい」
「きみに、だ」
「えっ?」
「素直に受け取れ」
 海棠は目をぱちくりしている。それからぱあっと嬉しそうな表情を見せた。
「あ、ありがとうございます!」
 ぺこりと一礼すると、海棠は大事そうに果物籠を抱えて、弾む足取りで石造りの階段を上っていった。徳川は、BMWの脇に立ってその姿を眺めた。どんなに訓練を受けた人間であっても、ふとした瞬間に女の可愛らしさを覗かせてくれる。徳川はそれにホッとさせられるのだった。
 別荘に上がり込むと、コーヒーの香りが漂っていた。キッチンでコーヒーを淹れていたのは松院で、テーブルでは美峰女史がノート型のパソコンを開いていた。美峰女史が視線だけを向けた。
「いらっしゃい、チーフ」
「お世話になります」
「仕事ですもの。お互いに持ち場を守り合っていれば、問題はなくってよ」
「ええ。そうですね。週末には、たっちゃんが代わります。それまで、よろしく」
「解りました」
 松院が二人にコーヒーを出した。当人はといえば、マグカップを二つ持ってキッチンを出て行こうとする。
「おい。どこへ行くんだ?」
「海棠に持っていく。オトナは二人でどーぞ」
 徳川は黙ってカップに口を付けた。美峰女史が微笑んでいる。
「妬ける?オ・ジ・サ・ン」
 徳川は『さぁね』とでも言うかのように、片目を瞑って見せた。美峰女史がくすくすと笑った。
「二人ともよくやってくれているわ。今時の若い者にしては本当によく気がつくっていうか」
 美峰はカップをソーサーに戻した。
「一昨日だったかしら。海棠に銃の指南を受けるとかで、バイクに二人乗りして出て行ったわ。よろしかったんですの?銃なんて持たせて」
「護身用として、仕方なく。始終、俺がついていてやれるわけではありませんから。美峰先生は反対ですか」
「ええ」
 美峰女史は片目を瞑って、
「そんなに心配だったら桐の箱に仕舞って鍵でもかけておいたらいいのよ」
「その手がありましたね」
 二人はくすくすと笑った。
 笑顔がすっと消えてから、美峰女史が話を切り出した。
「達矢くんからメールをもらいました。加藤くんのカルテを拝見したんですけど、恐ろしく頑丈な子ですわね。回復も早いと思います。注射器もまともなものを使ったらしくて、感染症の心配はありません。ただ・・・・HIV感染については、もう少し後にならないと検査結果が出ませんので・・・何とも」
 徳川は小さく頭を動かした。美峰女史は続けた。
「ご存知だったら、教えていただきたいのだけれど。加藤くんには恋人がいるのかしら」
 徳川は一瞬、睫を伏せてから、
「います」
「そう」
「どのみち、今の状態では性交渉云々の心配はないでしょう」
「それもだけど、彼にとってプラスに働くのか、マイナスに働くのか・・・」
「恋人の存在が?」
「ええ。身体の傷は癒えても、精神的なダメージはずっと残るわ。こっちの方が厄介。心配なのよ。彼もまだ若いから。将来だってあるんだし」
 徳川は冷めかかったコーヒーを飲み干した。
「だから、松院を付けました。あの子は、見た目は取っ付きにくいが、根は本当に優しい子です」
「そうね。初対面のときから、すぐに分かったわ。ご実家はお寺なんですって?」
「ええ」
 徳川はちらりと周りを窺った。立ち聞きをされている様子はなかった。
「あの子は、仲の良かった弟を亡くしています。まだ半年にもなりません。どんなに辛いか知れないのに、あの明るさで・・・俺にはあんな強さはなかった。真実を亡くしたときの俺は最低最悪で、情けない限りでしたから」
「今だから言えるけど、達矢くんが泣きの電話をよこしたことがあったわ。ヒロさんが壊れるかもしれない・・・って。あたしも心配したのよ。今だから言えるけど」
 徳川が睫を伏せて笑った。照れたような表情だった。それを見て美峰女史もふふと笑った。
「本当に好きなのね」
「えっ?」
「向田くんのことよ」
 徳川が小さく頭を動かした。
「ええ。彼は俺の・・・・蜘蛛の糸です」
 地獄を這いずる者を浄土へと導いてくれる、一筋の希望。
 徳川は信じていた。松院ならばきっと蒼士の『蜘蛛の糸』になって、蒼士を救ってくれるに違いないと。

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ゆずぶろ【2008/05/28 20:26】





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