オヤジスキーどもの穴(連載小説用ブログ)
ゆずかほるの連載小説掲載用ページ。ここに掲載する小説には男性同士の恋愛および性描写が含まれますので、18歳未満の方・BL・やおい・同性愛等に不快感を抱かれる方は今すぐ退散してください。


プロフィール

ユズカホル

Author:ユズカホル
サークル名:BUCK÷STYLE/自称スケベビッチ・オヤジスキー。中学生の頃には既に自他共に認めるオヤジ好きを確立。よって小説の登場人物は平均年齢高め。ジャンルはハードボイルド系JUNE。ちょっと後ろ暗い感じのする小説を書くのが好み。
【イベント参加のお知らせ】
GOOD COMIC CITY 15 への参加が決定しました☆
08年8月30日(土)東京ビッグサイト
配置は東6ホール・タ・15aです。
立派な新刊はありませんが、コピー本だけは持参しようと頑張って執筆してます!内容はヒゲオヤジシリーズの番外編かな?お楽しみに〜v



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4 白菊(しらぎく)(4/8)
連載小説2 『黍嵐(きびあらし)』
第4章 白菊(しらぎく)(4/8)

お読みになる方は、下の read more をクリックしてください。

<余談>
この週末、尾瀬に行ってきました。
ミズバショウがたくさん咲いていましたよ。
その記事は本家ブログに掲載する予定ですv
 しばらく経って、松院は蒼士の部屋から出てきた。
 リビングでは海棠が乾いたタオルを綺麗にたたんでいた。
「ヒロさんは?」
「帰られました」
「は?!」
「覗きに行ったら、二人ともよく眠っていらっしゃったから。そのことをお伝えしたら、『じゃあ、また来るから』って」
「それ、いつごろ?」
「五分か十分前ですけど」
 松院は壁の掛け時計をちらっと見てから、
「海棠!悪ィけどバイク貸してくれ!キーは?!」
「えっ?!だってメットが合わないんじゃ」
「いらねぇよ、そんなもん!」
 松院は海棠の愛車YAMAHA XJR1300に飛び乗ると、ガレージに停めてあるRANGE ROVERの脇を擦り抜けた。ススキの小道を抜け切って、アスファルトの路面に移った瞬間、アクセルをひねって加速する。
「海棠、ごめんよ!ちょいとムチ打たせてもらうぜ」
 暖機が十分でないエンジンを酷使することに抵抗があったが、十分の時間差を埋めるには甘いことは言っていられなかった。

 夕日が眩しい。松院はサングラスの下で目を細めた。流れるアスファルト。途切れることの無い風切音が耳を塞いだ。
 箱根観光の帰りと思わしき普通乗用車や観光バスに、何度も行く手を塞がれた。ジリジリしながらタイミングを計る。タイト・コーナーの向こう、対向車がないと確認できた瞬間、アクセルを開けて一気に抜き去る。やかましくホーンを鳴らす車もあった。『バカヤロウ!!』と悪態ついているのだろう。そんなことには一切お構いなしで、松院は前だけを見て突っ走った。
 二つ先のコーナーに、見覚えのあるテールがあった。白い車体の側面に、ALPINA特有のゴールドのラインが光っている。
「よっしゃ!射程距離!」
 少し長いストレートで邪魔な観光バスを一気に抜き去る。徳川のBMW ALPINA B3は、もう目の前だった。松院は左手の指先でパッシング・レバーを操作した。徳川は、振り返りはしなかったが、バックサイド・ビュー・ミラー越しに視線が合ったのが判った。
 路側帯の少し広くなっているところで、徳川はBMWを停めた。
 続いて松院もXJRを停めた。ノーヘルで走ったせいで、髪型がぐしゃぐしゃになっていた。
「松院、どうしたんだ」
「ロクに話もしないで帰っちゃうなんて思いもしなかったもんだから」
「だから追いかけて来たのか?」
「そう」
 徳川はやれやれと吐息を漏らした。
「電話があるだろう。聞かれたくなかったらメールもある」
「オレはヒロさんと話がしたかったのッ!」
 徳川は困ったような笑みを浮かべた。
「で?話は?」
「蒼士が話してくれたんだ。蒼士を犯ったヤツのこと」
 徳川の顔から笑みが消えた。
「それで?」
「髭があって、言葉が東部訛り。声はよく憶えてるって言ってた」
「他には?顔とか、背格好とか」
「ごめん。今は、それだけ」
「そうか」
 徳川は口髭に手をやった。自分の頭の中にあるプロファイルと照合しているようだった。
「蒼士がまた何か話してくれたら、ヒロさんに・・・」
 そこまで言って、松院は大きなくしゃみをした。立て続けに三回。
「シャツ一枚で突っ走ってくるバカがあるか。車に入れ」
 徳川は車中で暖房を全開にした。松院のこわばった顔がほーっと緩んだ。
「手、貸せ」
 徳川は松院の冷え切った手を握ってやった。
「ヒロさんの手、あったけー」
 松院はホッとしたように瞼を閉じた。徳川は松院の乱れた頭髪を手櫛で整えてやった。優しい、大きな手。松院はこの手が大好きだった。
「松院」
「ん?」
「すまんな。巻き込んで」
 松院がふふと笑った。
「いいよ。ヒロさんのためになるんだったらオレ、何でもする」
 視線が絡まる。徳川が松院に顔を寄せようとした時、松院がハッとしたように顔を背けた。
「ショウ?」
「ご・・・ごめん。ここじゃ、ちょっと」
 BMWの脇を大型の観光バスが轟音を立てて抜き去って行った。
 松院は徳川に差し出していた手をゆるりと引っ込めた。気まずい雰囲気を払拭するように、松院が口を開いた。
「あの・・・ヒロさん。蒼士と直接話しとかする予定ある?」
「ああ。あの子が頭の中に入れている情報も聞き出さなきゃならないし、あの子を犯ったヤツを見つけ出さすこともしなきゃならない。顔がわからない以上、声紋照合で・・・口癖があるとか、そういったことを蒼士は言っていなかったか?」
「ううん。そこまでは、まだ」
「そうか。何かあったら教えてくれ。少しでも手がかりが欲しい」
「うん。解った。でね、ヒロさん」
 松院は言いかかって止まってしまった。
「何だ?」
「あー・・・何でもない」
「何だ。話せよ」
「うん・・・・その・・・髭なんだけどさ。剃れない?」
「なんだと?」
「蒼士が怖がるんだ。髭を生やしたアイツとヒロさんは違うのに、でもやっぱり怖いんだって泣くんだよ。申し訳ないけどダメなんだって言って・・・・」
 徳川の鳶色の瞳が静かに松院を見詰めた。
「キスを拒んだ理由は、それか?」
「えっ・・・ちが・・・・」
 松院の心拍数が跳ね上がった。
自分でもよく解らなかった。目の前に居るのは最大の信頼を寄せて止まない最愛のひとなのに、それなのに、キスが受け入れられなかった。
この現実に、松院は動揺した。
 徳川の手が伸ばされて、松院の茶色い髪を撫でた。少しも変わらない、優しい手の感触だった。松院は胸が詰まった。
「ヒロさん、ごめん・・・オレ、自分でもよく解んない・・・」
「気にするな」

 松院が車外に出ると、既に暗くなり始めていた。XJRの暖機が終わってエンジンの回転が安定するまで、徳川は待っていてくれた。
「気をつけて戻れよ」
 赤いテールランプが遠ざかり、コーナーの向こうへと消えて行った。
 松院は身震いした。心の中が、寒かった。

=====
See you next time!

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