オヤジスキーどもの穴(連載小説用ブログ)
ゆずかほるの連載小説掲載用ページ。ここに掲載する小説には男性同士の恋愛および性描写が含まれますので、18歳未満の方・BL・やおい・同性愛等に不快感を抱かれる方は今すぐ退散してください。


プロフィール

ユズカホル

Author:ユズカホル
サークル名:BUCK÷STYLE/自称スケベビッチ・オヤジスキー。中学生の頃には既に自他共に認めるオヤジ好きを確立。よって小説の登場人物は平均年齢高め。ジャンルはハードボイルド系JUNE。ちょっと後ろ暗い感じのする小説を書くのが好み。
【イベント参加のお知らせ】
GOOD COMIC CITY 15 への参加が決定しました☆
08年8月30日(土)東京ビッグサイト
配置は東6ホール・タ・15aです。
立派な新刊はありませんが、コピー本だけは持参しようと頑張って執筆してます!内容はヒゲオヤジシリーズの番外編かな?お楽しみに〜v



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5 色葉散る(6/10)
連載小説2 『黍嵐(きびあらし)』
第5章 色葉散る(いろはちる)(6/10)

<注意>
今回は、性描写はありませんが、若干掠る程度の表現はありますので、
本当に苦手な方はご注意ください。
(本当に苦手だったら、このブログに
こないだろうというツッコミがきそうですが・苦笑)

お読みになる方は、下の read more をクリックしてください。


 ホテルの一室。
 ドアを開ける。部屋の中に明かりは無かった。
『入れ』
 廊下から差し込んでいた光がドアに遮られると、部屋の中は真っ暗になった。
『真っ直ぐ歩け』
 松院がそろそろと前進しているときだった。ジーンズのウエストに仕込んでいたPPK/Sを背後から掠め取られてしまった。注意力が前方のみに集中しているところに、虚を突かれたのだ。
 あっと思っているところに長い腕が回され、松院は背後から捕らえられてしまった。自分の体温を吸った、生暖かい銃口が下顎に触れている。
「・・・・・っ」
 松院は顔を引きつらせた。
 男は松院をベッドの上に突き倒した。そして松院の身体の両脇に膝をついて、真上から松院を見下ろした。
『話を聴こうか』
 声が出ない。頭の芯から血の気が引いていく。松院はみっともないくらい自分の身体が震えていることに気がついた。
『さっきまでの勢いはどうした?』
 暗闇の中、それと解るほどに男の殺気が漂っている。
 殺し屋というのは、こういうモノなのか?
 松院の脳裏に蒼士の姿が浮かんだ。傷ついた、蒼士の姿。
 蒼士が味わった恐怖とは、これだったのか?
 死と隣り合わせの、否、死に囚われた空間に放り出された恐怖。
 銃口が松院の心臓の真上に押し当てられた。
『泣き叫んで、助けを呼んだらどうだ?』
 松院は言葉を発することもできず、男の目を見る勇気も無かった。
 闇が、こんなに恐ろしいとは思わなかった。
 心臓の真上に銃口を突きつけたまま、男は指先で松院の肌をなぞった。
『ヒロのせいでソウシがどんな目に遭わされたか、おまえは知っているか?』
 男の指が、額から頬へ、頬から顎へと、なぞり降りていく。松院が身体をよじると、胸に押し付けられた銃口の圧力が増した。男の指先がほんの少しだけ動いただけで、トリガーが引かれて自分は死ぬ。そんな考えが松院の脳裏をよぎった。
 内股をなぞられた。ジーンズの上から、やんわりと握り込まれる。松院は全身に鳥肌が立った。
「・・・・っ」
 松院は唇を引き結んで顔を背けた。その横顔に男が顔を寄せて、低い声で言った。
『同じことをすれば、ヒロも怒るだろうか』
 同じことをすれば――蒼士と同じことをされたら、徳川はどうするだろうか。怒るだろうか。悲しむだろうか。怒り狂って、自分のことなど捨ててしまうだろうか。
 それでもいい。
 鬼の、我が身を喰らわば本望ゆえ――
 松院は震えの止まることの無い唇をようやく押し開いた。
『あんた・・・勘違いして・・・る』
『勘違い?』
『ソウシを追い込んだのは・・・・オレだ。オレが・・・オレの弟を殺した連中を追ってくれとソウシに・・・・だから・・・・』
 男がくつくつと喉を鳴らして笑った。
『馬鹿なやつだ。殺す価値を、自ら創り出した』
 男はPPK/Sを放りやった。部屋の奥でゴツンという鈍い音がした。
 男は長い指で松院の顎を捕らえると、背けていた顔を真上に向けさせた。唇に濡れた感触があった。男の舌が、松院の唇に一瞬触れた感触だった。
 松院は全身を粟立たせた。顎が震えるのを抑えられない。
 松院は唾を飲み込もうとした。口の中は乾ききっていた。
 それでも松院は、掠れた声でようやく言った。
『・・・オレの身体なんか・・・好きにすればいい』
 徳川は苦しむだろうか?何も感じないだろうか?
 それでもいい。徳川が、生きてさえいてくれれば――
 男は喉を鳴らして低く笑った。
『大した純愛だ』

 男は松院に自ら服を脱ぎ落とさせた。松院が震える指先でボタンを外していくさまを、男は黙って見ていた。
 薄いカーテン越しに差し込んでくる街の明かりが、松院の身体を微かに映し出した。
 男が上着を脱ぎ落とした。そして、拳銃をホルスターごと外した。
『来い』
 松院は男の前に立って、瞼を閉じた。
 指先が、触れてくる。頬、唇、顎、胸――
 松院は瞼を閉じたまま、思考を一点に集中させた。
 目の前に居るのは、徳川だと。自分は徳川に抱かれようとしているのだと、言い聞かせた。
 松院の身体がベッドに横たえられ、両手首を一掴みにされた。
 パサリと音がして、柔らかいものが松院の頬に触れた。男の長い金糸だった。瞼を閉じていても、松院にはそれが判った。
 長い髪が触れている。
 その感触が、松院を一気に現実に引き戻した。
 自分が抱かれようとしているのは、徳川ではない。
「う・・・・っ!」
 松院は瞼をきつく閉じた。駄目だ、違う。これは徳川なんだと、自分に言い聞かせた。
 男の掌が滑り降り、松院の内股に触れた。松院の身体がびくりと動いた。
 違う。あのひとの指先は、そんなふうには触れてこない。
「・・・っ・・・」
 松院は一層きつく瞼を閉じて叫んだ。
『撫で回していないで、さっさと犯れよッ!』
 ドン!と、大きな音がした。闇の中、松院の頭の上。反射的に松院の身体がびくりと跳ねた。
 男の拳が、ベッドのヘッドに押し当てられていた。
『おまえは、ルーじゃない』
 男が松院から身体を離した。松院は身体を反転させて、男の背中に向かって叫んだ。
『逃げンのかよ!』
『おまえはわたしのルードヴィッヒではない!』
 男はベッドの縁に腰掛けて、松院に背を向けた。長い髪をかき上げる仕草が途中で止まっている。
 男の背中に苦渋が滲んでいた。
 松院は、理解してしまった。この男も苦しんでいるのだと。苦悩するほどに蒼士のことを愛しているのだと。
 松院は鼻を啜り上げて、涙を拭った。そしてベッドの上を這って、男の真後ろまで行った。振動と衣擦れの音でそれと分かっているだろうに、男は動こうとはしなかった。
『あんた・・・・ソウシのこと、本当に好きなんだね』
 男は言葉を返さなかった。
『オレも・・・好きなんだ。大事な・・・弟なんだ』
 松院は小さく鼻を啜った。
『でも、ソウシをあんな目にあわせた原因は、オレにあるんだ。・・・オレの弟を殺した連中を潰すためにソウシは――』
『黙れ』
 男が低い声ではっきりと遮った。
『勘違いするな。そんなちっぽけな理由で、我々は動かない』
『・・・・ごめんなさい』
 松院は男の背中に額を押し当てた。それでも男は動かなかった。
 闇の中で、松院は感じていた。
 この男の背中にも、底なしの暗い穴が潜んでいるということを。

=====
See you next time!

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