オヤジスキーどもの穴(連載小説用ブログ)
ゆずかほるの連載小説掲載用ページ。ここに掲載する小説には男性同士の恋愛および性描写が含まれますので、18歳未満の方・BL・やおい・同性愛等に不快感を抱かれる方は今すぐ退散してください。


プロフィール

ユズカホル

Author:ユズカホル
サークル名:BUCK÷STYLE/自称スケベビッチ・オヤジスキー。中学生の頃には既に自他共に認めるオヤジ好きを確立。よって小説の登場人物は平均年齢高め。ジャンルはハードボイルド系JUNE。ちょっと後ろ暗い感じのする小説を書くのが好み。
【イベント参加のお知らせ】
GOOD COMIC CITY 15 への参加が決定しました☆
08年8月30日(土)東京ビッグサイト
配置は東6ホール・タ・15aです。
立派な新刊はありませんが、コピー本だけは持参しようと頑張って執筆してます!内容はヒゲオヤジシリーズの番外編かな?お楽しみに〜v



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2 白衣の聖人(2/6) 【Weiβ und Schwarz】
連載小説3 『Weiβ und Schwarz』
第2章 白衣の聖人(2/6)

お読みになる方は、下の read more をクリックしてください。

<余談?>
文中にビーパーという単語が出てきますが、これはポケットベルのことです。
この小説の背景となっている時代は、まだ携帯電話がメジャーでなかった頃
のため、あえてビーパーを呼び出しの道具として使っています。

 黒髪の青年は、ニコライの顔をじっと見詰めている。
「どうかしたか?」
 ニコライが言うと、黒髪の青年はハッとしたような顔をした。
「すみません」
 黒髪の青年は俯いてしまった。赤くなるかと思いきや、彼は緊張しているようだった。まだ幼さが抜けきっていない彼のルックスも手伝って、そんなちょっとした仕草でさえ初々しく見えてしまう。
 ニコライはピアノの鍵盤を指でポーンと弾いた。
「楽譜も見なければ手元も見ないのだな。みんな憶えているのか?」
「ええ。有名な曲に関してはほとんど。頭がというより身体が憶えているんです」
「それではわたしのリクエストを受けてくれるか?」
「ええ、何でしょう」
「一分ワルツは?弾けるか?」
 演奏家の青年は、緊張した面持ちをふと緩ませた。
「腕時計、ありますか?」
「ああ、ほら」
「じゃあ、計っていてください」
 モノトーンの鍵盤の上に青年の指がすっと置かれる。体格のわりに華奢な、女のような手。すらりとした美しい指。装飾品は右手の薬指につけた、金の指輪が一つ。
 演奏が始まる。弾かれているのはショパン作曲の『小犬のワルツ』だ。
 二分弱で演奏の終わってしまうハイテンポかつ短い曲で、欧米では別名『一分ワルツ』と呼ばれている。それを本当に一分で終わらせてしまおうというのか。
 青年は瞼を閉じ、口元には僅かに笑みをたたえている。彼が心から音楽を愛し、演奏を楽しんでいるのが伝わってくる。
 鍵盤の上を忙しく動き回る青年の指。間違った鍵盤は一つも叩かない。

 演奏の終わりとともに、ニコライが盛大に笑い出した。
「ハハハ。ちょうど一分だったよ。これはこれは」
 緊張がほぐれたのか、青年がふわりと笑った。
「喜んでいただけて光栄です、聖ニコラウス」
 ニコライの顔から、すっと笑みが消える。
「わたしを知っているのか?」
「ええ。この屋敷で何度かお見かけしています。別の呼び名では【白衣の聖人】とおっしゃるのでしょう?今日も白いスーツ姿でいらっしゃるから、ああ本当だって」
 青年の言うとおりだった。
 ニコライは常に白っぽい服装をしている。そして常に組織の首領プレジデント・セルジオの右隣に居て、御身を守っている。ニコライを突破してプレジデントに危害を加えた者は一人としていない。プレジデントにとってニコライは側近というよりむしろ守護神に近い存在なのだ。
 ゆえにニコライは、畏敬の念を込めて【プレジデントの右に立つ白衣の聖人】と呼ばれているのだった。
「それでは、おまえは・・・・」
 ニコライが言いかけたときだった。ブブブ・・・・という不快な振動音が空気を伝わってきた。音の発生源は青年の持っているビーパーだった。青年はポケットからビーパーを取り出して数字の羅列を眺めた。
「ああ、行かなくちゃ」
「呼び出しか?」
「ええ。お話の途中でしたのに、申し訳ございません」
 青年はすっと席を立った。
「じゃあ、僕はこれで」
 実にあっさりとスワロウテイルを翻そうとする青年。その華奢な手を、ニコライの長い指がはっしと捕らえた。
「待て。名前を」
 不意に手を握られた上に、真摯な眼差しでニコライに見詰められて、青年は戸惑ったような表情を浮かべた。
「あ、あの・・・・」
「教えるまで、この手を離さない」
 ニコライは真摯な表情を崩さず、青年の華奢な指に自分の指を絡めた。見る間に青年の耳が赤く染まっていく。
 青年は、絡めた指先を凝視しながら、ぽそりと言った。
「ル・・・・ルードヴィッヒです」
 ニコライは目を細めた。
「ルードヴィッヒ。ベートーベン閣下と同じ名か。良い名だ」
 ニコライが青年の手の甲に唇を寄せようとした瞬間、気配を察したのか、青年はパッと手を引っ込めた。
「し、失礼します!」
 青年はスワロウテイルを翻して、ほとんど駆け出すように広間から出て行った。
 
=====
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